世界最大規模の金融コングロマリットであるクレディ・スイス(Credit Suisse)は、先般発表した世界各国の海外送金に関するレポートの中で、ドナルド・トランプ米大統領の移民政策が在米ベトナム人(越僑)によるベトナムへの海外送金額に悪影響を及ぼす可能性が高いとの見解を示している。
2015年におけるベトナムへの海外送金額は132億USD(約1兆4900億円)で過去最高を記録し、アジア太平洋諸国の中で中国とフィリピンに続く3位につけた。しかし、2016年には約90億USD(約1兆0200億円)となり、前年に比べて約▲30%減と大きく減少した。
この背景には、ベトナム国家銀行(中央銀行)が2016年に個人・法人向け外貨建て預金金利の上限を年0%に引き下げたことがある。これを受けて、内外金利差による差益を目的とした海外送金が減少したものと見られている。
なお、在米ベトナム人は在外ベトナム人全体の半数を占めており、ベトナムへの海外送金に最も大きく貢献している。2016年におけるベトナムへの海外送金のうち、在米ベトナム人からの送金は全体の約6割に達し、これは同年の国内総生産(GDP)の4%に相当する。
移民に対する取り締まりを強化するトランプ政権の政策は、今後のベトナムへの海外送金に更に大きく影響するものと見込まれている。