サイゴン・ツーリスト運送[STT](Saigon Tourist Transport)の取締役で大口株主でもあるグエン・バン・ホン氏がホーチミン市人民裁判所に同社の破産を申し立てた件について、裁判所は22日、審査の上で破産申立を却下した。

  STT株21.8％を保有するホン取締役(2015～2020年任期)はこれに先立ち、STTが債務超過で支払い能力が失われたことを理由に同社の破産を申請していた。

  これを受けたSTT株主グループと同社の従業員は、裁判所宛てに文書を送付。この中で、同社が2020年1～3月に売上を計上し、労働者向け給与の資金源を確保しているとする根拠を示すとともに、自社の財務状況を説明して、破産申し立ての却下を要請した。

  STTの取締役会メンバーは、◇日本人3人、◇グエン・バン・ホン氏、◇ディン・クアン・ヒエン元社長の息子であるディン・クアン・フオック・タイン氏の5人から成る。なお、STTは、ヒエン元社長らが自身に利益誘導を図り、STTに多額の損失を与えたとして、損害賠償を求めて提訴している。

  STTは輸送、旅行、セキュリティサービス、海外への労働者派遣などを手掛けており、2004年に株式会社化、2011年にはホーチミン証券取引所(HSX)への上場を果たした。

   しかし、同社は社内紛争により2012年から赤字に陥り、2018年7月に強制的に上場廃止となった。2019年の税引後利益は▲133億VND(約6100万円)の赤字で、2019年末時点での累積赤字額は▲932億VND(約▲4億3000万円)に上っている。