ベトナム4大国営銀行の一角を占めるベトナム外商銀行(ベトコムバンク=VCB)が12月26日に1兆2000億ドン(約90億円)相当の転換社債を発行する。既に株式会社化を果たしているほかの銀行各行の株価は、未上場ながらも、IPO時の2倍以上を付けている。こういった状況の中、いずれ株式に転換できるべトコムバンクの転換社債に、国内外から注目が集まっている。
そして去る11月28日、ホーチミン市内のシェラトンホテルで転換社債発行に関する説明会が開催され、ベト株ドットコムも参加した。ちなみに、11月28日までの経緯を見ると、この転換社債に対する購入意欲はベトナム人の個人や機関投資家ばかりでなく、ベトナム在住の外国人や海外ファンドの間でも盛り上がりを見せている。
説明会開始時刻予定の午前8時半時点では会場はすでに超満員で、投資家の注目度の高さが伺われた。その後ひっきりなしに参加者が増え、ホテル側は当初予定していた200席ほどでは応じきれず、会場の入口付近のスペースと会場外に臨時席100席分を設けるほどだった。
会社側からの説明は「売り込み」に終始したため、多くの参加者から様々な質問が浴びせられた。以下、そのいくつかを紹介したい。
Q.
転換価格はいくらなのか。
A.
IPO落札価格の仲値で転換できる。
Q.
今回の転換社債(CB)発行額が1兆2000億ドン。今年9月に公布されたVCB株式化に関する政府決定によると、株式化後の株式公募について、1回ごとに資本金の10%を越えない額とされているが、今回のCB発行後の資本金は7兆ドンとなり、VCB側はこれが株式化前の最後の増資だと述べていることから、1回の公募では7000億ドンしか発行できないことになる。そうすると理論上、今回発行されるCB1兆2000億ドンすべてがIPO時に転換できないということなるのではないか。
A.
VCBとしても、政府に働きかけており、今後同決定は修正される可能性もある、必ずしもそういうわけではない。
Q.
すべてが転換できないとするとどのように対処するつもりなのか。
A.
その場合には、転換希望者に事前に転換希望登録を求めることになるだろう。
Q.
転換社債について、株式転換するか、社債として保持するかは所有者の判断に委ねられるはずだが、登録した時点でもう社債として保持する権利が失われるということか。あるいは登録しても転換できないということも発生するわけか。
A.
転換時の登録については、修正の余地がある、今後明らかになるだろう。
Q.
IPOの仲値で転換できるというが、それでは今後開催されるIPOに公募し落札すれば誰でも株式を取得できるというわけか。それならば、わざわざ利率の低い転換社債を今回購入するメリットは何か。
A.
IPO時に個人投資家や、小規模機関投資家などが落札できる可能性は限られ、落札できるとすれば高値で応札することになるだろう。そのため転換社債購入はメリットがあると考えられる。
Q.
今後の法改正次第では、IPO時に外国人投資家の参加も予想され、さらに放出される株式数にも制限が加わるとしたら、落札価格が釣り上げられることが懸念される。その場合当然、転換価格も高騰するが、これについてどうお考えか。
A.
・・・・・
Q.
IPOは06年末あるいは07年初めということだが、これは確実なのか、これが仮に延期されれば、低い利率で社債を持ちつづける投資家にとってはメリットが少ない。また償還期限が7年間というのも、購入を躊躇させている。
A.
現在VCBでは懸命な努力を行なっている。06年末あるいは07年初めに向け全力をあげているところだ。
Q.
先ほどの説明で、利回り入札では0.5%ごとに6段階の利率で入札できるということだが、それぞれの利率に応札できる株式数の上限は。
A.
現在、その規定はまだない。今後詰めることになる。
説明会終了後の感想
説明会では、最後まで転換価格に関する言及がなく、質疑応答で参加者が質問し初めてVCB側が答えていた。また、今回のCB発行に関し、依然詳細が固まっていない様子を露呈するようなやり取りが見られた。終了後の感想を一言でいえば、「落胆かつ失望」である。
まず、転換価格を事前に決めないという方針が気になる。IPO時の直前にあらためて決定する、ということも考えられるが、現時点では仲値を使用するという。圧倒的多数の潜在投資家は、「額面が転換価格になる」という一部報道を見て、購入の判断をしていた。しかし、蓋を開ければ(今回の説明会)「仲値を使用する」ことに方針転換となった。実際、会場でこの事実を初めて聞かされた多くの参加者からはどよめきが起こり、「こりゃあ、ダメだ。」と囁く人もいた。
これが最大のネックであるが、会社側の対応にも問題があった。何を質問しても「善処します。」という繰り返し。聞き手からすれば、「会社側はきちんと課題を詰めているのか?」と疑いたくなる。ベトナム政府は、何かが行き詰まるか行き詰まりそうになると約束を反故にする癖がある。しかも、べトコムバンクは国有銀行である。最近では、ベトナムウール社のIPOが不人気から中止になる騒ぎもあったが、べトコムバンクのIPOもまさかの「中止」または「延期」に追い込まれるのではないかと心配になる。会社側からすれば、償還まで7年もあるため、どこかの時点でIPOを実施すればいい、などと考えている可能性も捨てきれない。そうなると、転換社債を買った人は「とてつもなく長い塩漬け状態」に置かれることになる。
いざ社債販売の段階になって個人からの反応が色よくない場合でも、国有銀行が発行する転換社債であるため、「政府の指導」によって結局は国内機関投資家が不足分を吸収する可能性もある。しかし、そうなった場合、これは売り出しの「失敗」を意味することになる。今後のベトナム系企業による海外上場や海外での国債売り出しへの影響、それに国内証券市場の育成などを考えると、政府は是が非でも今回の売り出しを成功に導きたいはずだ。転換社債の売り出しまで2週間しか残されていないが、会社側か政府が何か切り札を出してくるかどうかが見ものだ。


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