香港上海銀行(HSBC)は先般発表したレポートの中で、ベトナムの2025年の国内総生産(GDP)成長率予想を従来の+6.6%から+7.9%に上方修正した。また、2026年のGDP成長率見通しも+5.8%から+6.7%に引き上げた。生産活動や貿易の拡大、内需の堅調さが背景にある。
ベトナムの2025年7~9月のGDP成長率は前年同期比+8.2%となり、市場予想の+7.2%を上回った。これにより、ベトナムは引き続き東南アジアで最も高い成長率を記録した。製造業と貿易が成長をけん引し、中でも米国向け輸出が堅調で、特に電子製品がこれを主導した。同期の対米輸出は前年同期比約+30%増となった。
HSBCは、人工知能(AI)関連テクノロジー需要の拡大がアジアのテック輸出を支えており、ベトナムもその恩恵を受けていると分析している。
貿易に加え、国内消費と観光も成長を押し上げている。観光競争力の向上が、外需減速リスクの緩和要因になるとみられている。一方、実質消費は前年同期比+8%増、実質投資は同約+10%増と内需も堅調だった。
政府は大型インフラ案件の推進を優先しており、9月末時点で公共投資の実行率は年間計画の約50%にとどまることから、さらなる成長余地があると指摘された。
海外直接投資(FDI)も引き続き経済成長を支えている。投資構造にも変化がみられ、シンガポールと中国本土がそれぞれ新規認可額の約4分の1を占め、韓国のシェアが低下する一方、米国の投資が拡大している。
また、8月末時点の貸付成長率は前年末比+20%となり、年初の政府目標である+16%を上回るペースで推移している。HSBCは、中央銀行による資金供給が企業の資金繰りを下支えしていると分析している。
インフレ率はおおむね安定しており、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.4%上昇と市場の予想通りだった。コアインフレ率も+3.2%にとどまり、中央銀行の上限目標である+4.5~5.0%を下回った。
ただし、HSBCは「最大のリスクは世界貿易の変動にある」と指摘した。外需環境の不透明感が残る中でも、ベトナムは東南アジアの中で依然として高い成長ポテンシャルを維持していると評価している。


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