たとえば、かなり長期間に亘って保険をかけられているバイクが10万台あり、毎年約1万台が最低1件は事故に遭って賠償を請求するとしよう。しかし、1年に賠償を請求する件数は必ず1万件になるわけではない。いくつかの仮定によって、1万件とした場合1年の賠償請求件数は長期的に見ると平均100件程度となる(現在のベトナムの場合の例として)。
ということは、最初に予想した1万件から100件という数字が出て来るが、これはつまり1%(=100/1 万)に相当する。予想ロスに対する実際のロスの変動は客観リスクと言われる。客観リスクは保険に加入するバイクの台数が増加すれば減少する。上記の例では、保険に加入するバイクの台数は10万台で、客観リスクが1%となる。もし保険に加入するバイクの台数が100万台に増えたとしたら、事故に会うバイクの数も10倍に上がり、10万件になる(100万の10%)。しかし、実際のロス(賠償請求件数)は3倍しか変動せず、100件から316件(10万の平方根)になる。ということは、相対的に変動する客観リスクは1%(100/10万)から0.316%(316/100万)へ減ることになる。
この例から、客観リスクは計算可能であり、リスクを管理するためのとても有効なツールだということがわかる。保険に加入する台数が多ければ多いほど、保険会社はリスク率をより正確に計算できるようになる。
一方、リスクは純粋リスクと投資リスクに分類される。純粋リスクは損失が発生するかどうかという状況から生まれる。例えば、火災、天災、事故や負傷などが発生するリスクなど。逆に投資リスクは利益が出るかどうかという状況から発生する。例えば、起業家には大きな利益を生み出す可能性もあれば、赤字を出す可能性もある。株価が上がって儲かる可能性があれば、株価が下がって損する可能性もある。純粋リスクは保険の対象となる一方で、投資リスクは株価の変動に対応するために株式インデックスの先物取引などの保険以外の方法で抑制されるので、こういった分類がとても大切になる。
社会全体から考えれば、投資リスクにもメリットがある。経営の競争はいくつかの企業を破産に追い込むかもしれないが、商品とサービスは以前より低い価格や良い品質で供給されるようになるので、社会にとってはメリットと言えるだろう。逆に、地震、洪水、火災などの純粋リスクは社会的にはまったくメリットがない。
その他、アナリストはリスクを静的要素と動的要素によって分類する場合もある。静的リスクは人間がルール通り行動しなかったり、間違ったり、有害なことをしたりすることから発生する。静的リスクは変化の少ない経済で大きな存在となるとすれば、動的リスクは変化が多い経済において顕著となる。動的リスクは、たとえば消費者の心理の変化、科学技術の進歩、事務処理方法の改善などによって顕在化する。長期的に見ると、動的リスクのメリットは大きなものになる。動的リスクによって資源や社会に備わる原動力が合理的に調整されていくことになるからだ。
リスクは誰でも望まないものではあるが、経営の面から考えると、必要なものであるといえる。以前は、濁った水で釣りをする(水が濁っていて(魚が)周りが見えないことをいいことに、魚釣りをする)、ということわざは道徳的に悪い意味を持っていたが、現在では経営者や投資家はその意味を別の意味で高く評価し、積極的に活用している。
価格を上から指導されて証券投資をしたり、或いは全てのことが真昼のようにはっきりしていれば、リスクは少なくなるはずである。しかし、情報があいまいで、法整備が整っていない市場ではリスクはリスクではなく、大きな利益を上げるチャンスにもなる。


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