地場総合インターネットメディア運営大手タインタインコンツーリスト[VNG](VNG Corporation)とベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)は、市内にある本社ビル「VNGキャンパス(VNG Campus)」内に人工知能(AI)研究拠点「サイゴンAIハブ(Saigon AI Hub=SAIH)」を開設した。
SAIHは、同市初となる共同利用型のAI研究拠点で、研究・教育・社会実装を結びつける戦略拠点として位置づけられ、AIを活用した社会課題解決を目指す。
SAIHでは、研究者、学生、専門家、独立系研究チームに対し、画像処理装置(GPU)、データセット、クラウドサービス、研究用ラボ設備などを無償で提供する。利用者がVNZとVNU-HCMのAI専門家と協働することで、学術研究から実装までの距離を縮める仕組みとなっている。
これに先立ち、VNZとVNU-HCMは、2025年から2030年までの戦略的な研究開発コミュニティ形成を目指して協力覚書を締結した。SAIHはこの覚書締結から、わずか6か月で運用を開始したことになる。協力の一環として、VNZが250億VND(約1億4800万円)を研究開発支援として拠出し、今後3〜5年間で1000人の高度IT人材育成をVNU-HCMと共同で進める。
初期段階では、VNU-HCMの研究者や市内の独立研究チームなど約30人が参加予定で、LLM(大規模言語モデル)、VLM(マルチモーダルモデル)、AIエージェント、産業別AIなどをテーマに研究し、年間3〜4本の国際共同論文の発表や試作モデルの開発を目標に掲げる。
また、SAIHは公共利用が可能な「オープン・モデル・ハブ(Open Model Hub)」を構築して研究成果やモデルをコミュニティへ還元するほか、学術大会やワークショップ、テクノロジーイベントの開催拠点としても活用する。
VNZ創業者 兼 会長のレ・ホン・ミン氏は、「SAIHの役割は研究成果の所有ではなく、研究者が自由に挑戦できる開かれた環境づくりだ」と述べ、同社が研究成果の知的財産権を要求しない方針を強調した。今回のSAIH開設は、双方が推進する「国家・大学・企業」連携モデルの実装であり、研究成果の実証・社会実装・商用化へのプロセス加速が期待される。
2004年に設立されたVNZは、ベトナムのモバイルメッセンジャーアプリ「ザロ(Zalo)」を開発・運営する総合インターネット企業として知られる。ベトナム初のユニコーン企業であり、積極的な事業多角化を通じてプラットフォームやコンテンツ事業などで成長を続けている。主な事業分野は、オンラインゲーム、Zalo&AI、電子決済、デジタルビジネスなど多岐にわたる。


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